一票の重み ~いさ哲郎さん(中野区議)、当選無効の裁決を取り消す勝訴判決~
中野区議会議員のいさ哲郎さん(日本共産党)が、東京都選挙管理委員会にたいし、4月の区議選の当選を無効とした裁決の取り消しを求めた訴訟について、12月15日、原告いささん勝訴の東京高裁判決が出ました。

当事務所の弁護士3名(久保木、鳥飼、藤原)が原告代理人をつとめました。
1票の重さを実感させられるケースですので、すこし長文になりますが、紹介させていただきます。
(NHKの首都圏NEWS WEBでも報道されました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20231214/1000100087.html)
いささんは、ことし4月の中野区議選で次点の候補と0.4票差で当選しましたが、次点候補(田中ヒロシ氏)の申し立てにより行われた開披調査(関係する票の確認)の結果、都選管は、いささんの有効票とされていた票のうち1票が無効であると判断し、当選無効を裁決しました。
これを争う場合には、30日以内に管轄の高等裁判所に提訴しなければなりません。
いささんから相談を受け、中野すずらん法律事務所の3名、しいの木法律事務所の八坂玄功弁護士、東京法律事務所の加藤健次弁護士の5名が原告代理人となって、8月に提訴しました。
当選の有効性を争う訴訟は迅速さが求められ、提訴から100日以内に判決しなければなりません。
争点となった票は2つでした。
一つは「いさしんいち」と記載された票です。都選管はこの票を無効と判断し、いささんの当選は無効と裁決したのでした。
無効の理由は、「哲郎」と「しんいち」には何ら類似性がないというもの。「いさ」という氏の特殊性等は考慮せず、名だけに着目し、字面(じづら)だけで切り捨てた印象でした。
これに対し、高裁判決では
(1)候補者に「いさ」は他にいない。「しんいち」もいない。したがって、「いさしんいち」票は、原告(いさ哲郎)以外に投票する意思で書かれたと解する余地はない。
(2)「いさ」という氏は比較的珍しい。
(3)原告(いさ哲郎)は、選挙期間中、公設掲示板用ポスターなどに「いさ」とひらがなで大きく表示し、「いさ」を印象付けるよう政治活動を行ってきた。
(4)候補者が60名もおり、投票しようとする候補者の氏名を備え付けの名簿で十分確認しないまま不正確に記載することが十分あり得る。
として、原告(いさ哲郎)に投票しようとする者が「いさ」は明確に記憶していたが、名については不確かな記憶で記載したと推認できる、と結論しました。
裁判所は、原告側が証拠として提出した、いささんの選挙活動や政治活動についての資料(「いさ」という氏を押し出した活動)にもきちんと目配りし、ほぼ、原告いささんと私たち弁護団の主張を容れた判断をしてくれました。
第2の争点は「甲田ヒロシ」と書かれた投票が、次点(つまりいささんが当選無効なら当選となる方)の「田中ヒロシ」さんの票として有効か、というものでした。
この票の存在は、文書送付嘱託を申し立て、中野選管から裁判所に「田中ヒロシ」さんの有効票を持ってきてもらい、原告いささん・被告都選管・参加人田中さん立ち会いのもと、一票一票確認する中で浮上しました(八坂弁護士と私も立ち会いました)。
中野選挙区では「甲田ゆりこ」さんという候補者もおり、当選しています。
原告側は、これは単なる誤記ではなく、二人の候補者の混記だと主張しました。混記であれば無効、というのが裁判実務です。
しかし、裁判所は、1文字目は「甲」ではなく「中」であり、「中田ヒロシ」は「田中ヒロシ」の誤記であり、「田中ヒロシ」票として有効だと判断。この点では、被告都選管の主張を容れました。
どう読んでも「中」とは読めないので、この判断はおかしいと弁護団は考えています。
都選管は、すでに上告する旨を表明しており、争いは最高裁に移ります。今回負けた争点もひっくり返すくらいの論戦を準備して、最高裁で最終的な勝利をかちとるため頑張ります。
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