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【コラム】 離婚事件の解決はさまざま 弁護士 久保木亮介

2003年に弁護士登録をして以来、年に数件から多い年には十件近くの離婚事件の代理人をつとめています。

離婚というのは、一度はずっと仲良く暮らそうと決意した相手との決別ですから、それだけでつらいものです。離婚の実現まで結構時間もかかり、離婚の条件をめぐって相手とのぶつかり合いになりますから、精神的にもしんどいです。私が「離婚にはパワーとその持続が必要なんですよね…」とつぶやくと、依頼者は皆さん深く頷(うなず)かれます。

 

離婚とはそういうものなので、代理人になる弁護士にもパワーとその持続が要ります。あくまで代理人ではあるのですが、「離婚というゴール」に向けて、当事者と励ましあって進んでゆく、にじり寄っていく、というイメージを大切にしています。

 

 

何十件も離婚事件に関わってきて最近思うようになったのは、離婚事件の「良い解決」というのは本当にさまざまだな、ということです。

親権・養育費・財産分与・慰謝料など、離婚紛争の「基本メニュー」につき、依頼者の方にできるだけ有利な条件を実現する、という仕事の基本部分は変わらないのですが、それだけではないな、と思うようになりました。

 

たとえば、離婚後にお子さんと面会できるかどうかは多くの方にとって切実です。

離婚の際の財産分与や養育費の金額について、多少相手に譲歩してでも、お子さんの面会についてとしっかり合意することを優先される方は多いです。月に一度面会してお子さんの成長を見つめることで、「この子のためにも頑張って働こう!」という活力が湧いてくるのですね。私自身子育てするようになってから、以前よりその感覚が良く分かるようになったと思います。

弁護士はどうしても、「養育費の算定表の金額を越えて相手に支払う必要はないですよ!」と‘’争う“方向、経済的な負担の額を押し下げる方向でのアドバイスに傾きがちです。それはそれで必要なことなのですが、離婚の協議や調停の最終版のぎりぎりの所では、お金で表現しきれない条件(お子さんとの面会や、将来の進路について両親が協議する機会の確保など)を確保するために、金銭面で譲歩するのが正解ということもありますし、そのように助言することもあります。

離婚紛争中はお子さんとの面会が実現していなかったのが、離婚成立後に「久しぶりに子どもを会えました!」という明るいご連絡を頂けると、代理人としても嬉しいものです。

 

家庭裁判所での調停や訴訟だけが、離婚事件の良い解決手段とは限りません。

妻が自分で家庭裁判所に離婚調停を申し立てたが、男性の調停委員が「妻は我慢して夫に従え」という結婚観を押し付けてくるので調停が遅々として進まない。年度替わりが迫っており、まだ小さいお子さんを保育園に確実に入園させて、両親とも働いて収入を得ないと生活が成り立たない。母子家庭の方が保育園の入園優先度が高いので、申請前に離婚を実現したいのに、このままでは間に合わない…。

すぐに代理人となって夫に連絡し、今の夫の収入に見合った養育費を払ってもらうことで合意を取り付け、次回の調停の期日を待たずに、離婚と親権、養育費について確認する公正証書を作成して離婚成立。保育園の申請にも間に合いました。これは非常にスピードが求められるケースで、勉強になりました。(なお、私たちの事務所は中野公証役場に近いので、離婚以外にも、遺言書作成など様々な法律問題の解決のため、公証役場にずいぶんお世話になっています。)

 

離婚事件は、「夫婦とは、親とは、人間とは何だろう」と常に考えさせられ、常に新たな学びと発見があります。弁護士にとって「しんどいけれど離れられない」事件ですので、これからも真剣に取り組んでいこうと思います。

 

 

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